軽貨物ナレッジ by K-LEDGE
点呼・安全管理

軽貨物のアルコールチェック実務と記録|自分に当たる制度と、毎日の検知・記録・保存の回し方

軽貨物のアルコールチェックは「点呼(貨物自動車運送事業法系)」と「安全運転管理者(道路交通法)」の2つの制度で決まります。自分にどちらが当たるかの見分け方と、乗務前後の検知・目視・記録・1年保存を毎日確実に回す実務を整理します。

軽貨物ナレッジ編集部公開 2026年7月8日時点の情報
目次
  1. 自分に当たるのはどちらの制度か
  2. 検知器と目視で酒気帯びを確認する
  3. 記録に何を書き、どれだけ残すか
  4. いつから必要か——施行日と経過措置
  5. 結局どうすればいいか

お酒が残っていないかの確認(アルコールチェック)は、軽貨物の世界では大きく2つの制度で決まっています。ひとつは貨物自動車運送事業法にもとづく「点呼」で、黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)で運ぶ人は、ひとりで運んでいてもこちらが基本です。もうひとつは道路交通法の「安全運転管理者」の制度で、こちらは一定の台数以上の車を使う事業所が対象です。軽貨物の個人事業主は台数の条件を満たさないことが多く、通常は前者の点呼制度が当てはまります。結論から言うと、多くのドライバーがやることは——乗務の前と後に、アルコール検知器で酒気帯びの有無を確かめ、あわせて体調などを目で確認し、その内容を記録して1年間保存する、この毎日の繰り返しです。この記事では、自分にどちらの制度が当たるかの見分け方と、検知・記録・保存を毎日確実に回す実務を、2026-07-08時点の情報で整理します。

自分に当たるのはどちらの制度か

大半の軽貨物ドライバーや一人親方に当てはまるのは、貨物自動車運送事業法にもとづく「点呼」です。令和6年の法令改正で貨物軽自動車運送事業の安全対策が強化され、令和7年(2025年)4月から、黒ナンバーの事業者は乗務の前後に、アルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無を確認し、あわせて運転者の状態を目視で確認したうえで、その内容を日々点呼記録簿に記録して1年間保存することが求められています。ドライバーを何人も抱える会社だけでなく、ひとりで事業を行っている人も対象で、その場合は自分で自分の確認を行います。この改正では点呼のほかに、営業所ごとの貨物軽自動車安全管理者の選任・届出、選任前の講習と選任後2年ごとの定期講習、初任運転者等への特別指導・適性診断、業務の記録(1年保存)・事故の記録(3年保存)、国土交通大臣への事故報告もまとめて義務づけられました。

もうひとつが、道路交通法の「安全運転管理者」の制度です。こちらは白ナンバーも含め、一定の台数以上の自動車を使う事業所が対象で、選任の基準は、乗車定員11人以上の自動車なら1台以上、それ以外の自動車なら5台以上を使う事業所ごとに1名です(総排気量50ccを超える自動二輪車は1台を0.5台として数え、台数が20台以上になるごとに副安全運転管理者も必要になります)。軽貨物の個人事業主は、この台数の条件を満たさないことが多いため、通常は前者の点呼制度が当てはまります。一方、多くの車両を持つ軽貨物事業者は、点呼に加えてこちらの安全運転管理者の制度にも該当することがあり、その場合は両方の記録が必要になります。まずは自分の事業所の使用台数を数え、どちらに(あるいは両方に)当たるのかを最初にはっきりさせておきましょう。

検知器と目視で酒気帯びを確認する

どちらの制度でも、確認の柱は「アルコール検知器での確認」と「目視での確認」の組み合わせです。点呼制度(貨物自動車運送事業法系)では、乗務の前後にアルコール検知器で酒気帯びの有無を確かめるとともに、運転者の状態を目で見て確認します。安全運転管理者の制度(道路交通法)でも、令和4年(2022年)4月から目視等での酒気帯び確認と記録の1年保存が、令和5年(2023年)12月からはアルコール検知器を用いた確認と、検知器を常時有効に保持することが義務づけられています。「検知器で測る」だけでなく「顔色や受け答え、様子を目で確かめる」までがワンセットだと考えてください。なお、アルコール検知器の細かな定義や、酒気帯びをどう判定するかといった技術的な細部は、最新の国土交通省・警察庁の案内で確認するのが確実です。

直行直帰や出張などで、確認する人と運転者が対面できない日もあります。その場合でも確認を省くことはできません。安全運転管理者の制度では、カメラやスマートフォンなどを使い、対面に準ずる方法で運転者の顔色や様子を確認し、あわせて検知器の結果を報告してもらう運用が認められています。ひとりで運ぶ個人事業主の場合は、自分で検知器を使って確認し、その結果を記録に残します。「会えないから今日は省略」ではなく、「会えない日はカメラ越しに、ひとりの日は自分で」という形で、毎日必ず一回は確認と記録を通す仕組みにしておくのが安全です。

記録に何を書き、どれだけ残すか

点呼制度では、確認した内容を日々点呼記録簿に記録し、1年間保存します。あわせて、日々の業務の記録(運転日報にあたるもの)も作ります。業務の記録に書く主な項目は、運転者等の氏名、車両番号(ナンバープレート)、業務を開始・終了・休憩した日時、業務を開始・終了・休憩した地点、業務に従事した距離、主な経過地点で、これを1年間保存します。事故を起こしたときは別に事故の記録を作り、乗務員等の氏名・事故の発生日時・場所・概要・原因・再発防止対策などを書いて3年間保存します。「点呼と業務の記録は1年、事故の記録は3年」と、年数の違いで分けて覚えると取り違えません。

安全運転管理者の制度では、酒気帯び確認の記録簿に、確認者名、運転者名、運転者が業務に使う自動車の登録番号など、確認の日時、確認の方法(アルコール検知器を使ったかどうか、対面でない場合はその具体的な方法)、酒気帯びの有無、指示した事項、その他必要な事項を記載し、1年間保存します。両方の制度に該当する事業者は、点呼記録簿と安全運転管理者側の記録簿の双方を、それぞれの保存期間まで残すことになります。どちらの記録も、後から誰が見ても「いつ・誰が・どの方法で確認し・結果はどうだったか」が分かる形で埋めるのが基本です。

いつから必要か——施行日と経過措置

時期を整理します。点呼制度(貨物自動車運送事業法系)の安全対策強化は、令和7年(2025年)4月から始まっています。安全運転管理者の制度(道路交通法)では、目視等での酒気帯び確認と記録の保存が令和4年(2022年)4月から、アルコール検知器を使った確認と検知器の常時有効保持が令和5年(2023年)12月から義務化されています。ここで注意したいのが、点呼制度の側にある経過措置です。令和7年3月末までに経営届出をした既存の事業者は、貨物軽自動車安全管理者の選任と講習の受講を令和9年(2027年)3月までに、初任運転者等への特別指導・適性診断を令和10年(2028年)3月までに済ませればよいとされています(令和7年4月以降に届出をした事業者には、この猶予はありません)。ただし、この猶予はあくまで安全管理者の選任や講習などの話であって、乗務前後のアルコールチェックと点呼・記録の保存は猶予の対象ではありません。「安全管理者の選任は少し先でよい」ことと「アルコールチェックと記録は今から必要」なことを、混同しないようにしてください(2026-07-08時点)。

結局どうすればいいか

やることを整理します。第一に、自分がどちらの制度に当たるかを最初に確かめます。黒ナンバーで運ぶ人は、ひとりでも貨物自動車運送事業法系の点呼が基本で、乗車定員11人以上なら1台、その他は5台以上を使う事業所は道路交通法の安全運転管理者にも該当します。第二に、毎日、乗務の前と後にアルコール検知器で酒気帯びの有無を確かめ、あわせて体調などを目視で確認します。第三に、確認した内容を記録に残します——点呼制度なら日々点呼記録簿(1年保存)と業務の記録(1年保存)、事故があれば事故の記録(3年保存)、安全運転管理者なら酒気帯び確認の記録簿(1年保存)です。第四に、直行直帰などで対面できない日も省略せず、カメラ・スマホでの確認や自己確認で必ず一回は通します。第五に、既存事業者向けの経過措置(安全管理者の選任・講習は令和9年3月、初任運転者への指導は令和10年3月)はあっても、アルコールチェックと記録の保存そのものは猶予されません。選任義務違反や届出義務違反などには罰則が設けられていますが、金額などの細部や検知器の定義は変わりうるため、最新は国土交通省・警察庁・運輸局の案内で確認してください(2026-07-08時点)。

出典・参考

官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。

この記事は参考になりましたか?

いただいた声は、今後の記事づくりの参考にします。

関連記事

点呼・安全管理

軽貨物の点呼義務の基礎|何をどう確認し、どれだけ記録・保存するか

黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)は、業務前・業務後の点呼で酒気帯びや健康・車両を確認し、点呼記録簿に記録して1年間保存する義務があります。ひとりで運ぶ個人事業主でも必要な、点呼と記録・保存の基礎を整理します。

点呼・安全管理

軽貨物の「貨物軽自動車安全管理者」選任義務への対応|誰が・いつまでに・何をするか

2024年の省令改正で、黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)にも安全管理者の選任が義務づけられました。個人事業主・車両1台でも対象です。候補者選び・講習・選任届出・2年ごとの定期講習という流れを、猶予期限から逆算して整理します。

点呼・安全管理

点検記録の残し方|黒ナンバーは日常点検・定期点検・業務記録で「残す義務」が違う

軽貨物(黒ナンバー)の点検にまつわる記録は「日常点検・定期点検・2025年4月からの業務/点呼/事故」の3層に分かれ、保存義務の有無も年数も違います。どれを・どれだけ残せばいいかを、法的根拠つきで整理します。

点呼・安全管理

日常点検のやり方と見るべき箇所|黒ナンバーは「1日1回・運行前」が義務

黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)の車は事業用自動車にあたり、日常点検は「1日1回・運行の前」が法的義務です。エンジンルーム・車のまわり・運転席の計15項目を、どこを・どう見るかまで具体的に整理します。

点呼・安全管理

スピードと安全を両立させる配達の考え方|「急ぐほど稼げる」は本当か

「速く回すほど稼げる」と思われがちだが、国のデータでは軽貨物だけ事故が増え、事故の最多は焦りが生む追突だ。2025年4月の安全記録義務化や休憩の目安をふまえ、急がず件数を最大化する考え方を整理する。

点呼・安全管理

運行記録の付け方と保存のルール|黒ナンバーの業務記録・事故記録は何をどれだけ残すか

黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)は2025年4月から、業務の記録(運転日報)・事故の記録・点呼記録の作成と保存が義務です。業務記録は1年、事故記録は3年と保存年数が違う点に注意しながら、何を書きどれだけ残すかを整理します。

点呼・安全管理の記事

このカテゴリをもっと見る