軽貨物ナレッジ by K-LEDGE
点呼・安全管理

配送中に事故を起こしたら|止まる・救護・警察報告から保険・運輸支局への報告まで

軽貨物(黒ナンバー)の配送中に事故を起こしたら、まず道路交通法72条の「止まる・救護・危険防止・警察報告」が義務です。現場の記録・保険連絡・運輸支局への報告と2025年4月の新ルールまで、何をどの順で・いつまでにやるかを整理します。

軽貨物ナレッジ編集部公開 2026年7月8日時点の情報
目次
  1. 事故直後の初動 — 止まる・救護・危険防止・警察報告
  2. 立ち去ると「ひき逃げ」になる — 救護義務違反の重い罰則
  3. 現場の記録・目撃者の確保と保険会社への連絡
  4. 黒ナンバー事業者の報告義務と2025年4月の新ルール
  5. 結局どうすればいいか

配送の途中で事故を起こしてしまったとき、いちばんやってはいけないのは、動揺してその場を離れてしまうことです。やるべきことは順番が決まっています。現場ではまず「止まる→けが人を助ける→後続車への危険を防ぐ→警察に届ける」。落ち着いたら「現場を記録する→保険会社に連絡する」。そして黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)の事業としては「運輸支局へ報告する」まで続きます。この記事では、その一つひとつを、法律で決められた義務と2025年(令和7年)4月に始まった新しいルールを軸に、何を・どの順で・いつまでにやるかで整理します。金額や期限の一部は制度で変わりうるため、本記事は2026-07-08時点の情報です。

事故直後の初動 — 止まる・救護・危険防止・警察報告

事故を起こしたときの初動は、心がけの問題ではなく、道路交通法第72条で運転者に課された法律上の義務です。事故があったとき、運転者その他の乗務員は、直ちに運転を停止したうえで、(1)負傷者を救護する、(2)道路上の危険を防止する、(3)警察官へ報告する、の3つを行わなければなりません。現場での実際の動きに落とすと、まず車を止めて被害の状況を確認し、けが人がいれば救護して必要なら救急車を呼び病院へ運び、事故車を安全な場所へ移して後続車に事故を知らせ二次被害を防ぐ、という順になります。ここまでを終えてから警察への報告に進みます。相手と「その場で示談にしよう」という話になったように見えても、警察への報告を省くことはできません。

警察への報告は「事故がありました」と伝えるだけでは足りず、伝える中身が決まっています。報告するのは、(1)事故が起きた日時と場所、(2)死傷者の数と負傷の程度、(3)壊れた物とその壊れ具合、(4)車に積んでいた積載物、(5)その事故についてすでに講じた措置、の5項目です。もし現場に警察官がいない場合は、直ちに最寄りの警察署の警察官へ報告します。警察への届け出があってはじめて交通事故証明書が出るため、後の保険手続きのためにも、けがの有無や損害の大小にかかわらず必ず通報しておきます。

立ち去ると「ひき逃げ」になる — 救護義務違反の重い罰則

ここは軽貨物ドライバーにとって特に重要です。けが人を救護せずに現場を離れると、いわゆる「ひき逃げ」=救護義務違反となり、罰則が非常に重くなります。救護義務違反は10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条第2項)です。加えて行政処分の点数は35点で、この点数だけで運転免許は取り消され、取り消された日から3年間は再取得できません。黒ナンバーで働く人にとって、免許を3年間失うことは仕事そのものを失うことに直結します。「軽く当たっただけ」「相手が立っていたから大丈夫だと思った」という自己判断で現場を離れるのが、最も避けるべき行動です。動揺していても、止まって・助けて・届ける、の順番を思い出してください。

現場の記録・目撃者の確保と保険会社への連絡

救護と通報が済んだら、その場でしか残せない記録を取ります。写真に残しておきたいのは、道路の状況、衝突した地点、双方の車が止まっている位置、破片が散らばっている範囲などです。時間がたてば車も破片も動かされ、二度と同じ状態は撮れません。あわせて、近くに事故を見ていた人がいれば、後で連絡が取れるよう目撃者の情報を確保しておきます。相手の車のナンバー・連絡先・車検証、相手が加入している保険会社の控えも、その場で確認できると後がスムーズです。これらは「言った・言わない」で争いになったときに、自分を守る材料になります。

そして忘れやすいのが、自分が加入している保険会社への連絡です。特に人にけがをさせた対人事故の場合、任意保険では原則として事故が起きた日から60日以内に書面で通知しないと保険金が支払われない、という取り扱いがあるため、連絡は迅速に行う必要があります(2026-07-08時点)。「相手が大丈夫と言ったから」と先延ばしにすると、この期限に触れかねません。事故を起こしたら、その日のうちに保険会社へ一報を入れるのが安全です。なお黒ナンバーで最低限入る自賠責保険は対人賠償のみが対象で、補償額に上限(死亡時3000万円等)があります(2026-07-08時点)。相手の車や物、自分の車両や積み荷まではカバーされないため、事業用軽貨物では対物・車両・貨物などを補償する任意保険や貨物保険への加入が実務上必要とされ、その保険料は自家用車より高くなる傾向があります(2026-07-08時点)。加えて、自分自身のけがはその場は軽く見えても後から症状が悪化することがあり、事故とけがの因果関係を証明するためにも、早めに医師の診断を受けておくべきだとされています。

黒ナンバー事業者の報告義務と2025年4月の新ルール

個人としての初動とは別に、貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)には事業者としての報告義務があります。自動車事故報告規則では、報告の対象になる事故(自動車の転覆・転落・火災、死者または重傷者が出た事故、10人以上の負傷者が出た事故、危険物の漏えい等)が起きた場合、原則30日以内に自動車事故報告書を、使用の本拠を管轄する運輸支局長等を経由して国土交通大臣に提出しなければなりません。さらに、特に重大な事故(2人以上の死者が出たもの、危険物の飛散・漏えいを伴うもの、酒気帯び運転を伴うもの等)については、30日以内の報告に加えて、24時間以内にできる限り速やかに運輸支局長等へ速報する必要があります。まず24時間の速報、次に30日以内の報告書、という二段構えになっている点を押さえておきます。

この事業者の義務は、2025年(令和7年)4月から強化されました。貨物軽自動車運送事業の安全対策を強化する制度改正が施行され、事故が発生した場合は概要・原因・再発防止対策などの記録を作成して3年間保存する義務、毎日の業務開始・終了の地点や従事した距離などの業務記録を作成して1年間保存する義務が新たに課されました。さらに、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、講習を受けたうえで国土交通大臣へ届け出ることが義務づけられ(すでに事業を行っている場合は施行後2年の猶予があります)、死傷者を生じた事故など一定規模以上の事故について、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ報告することも義務化されました。つまり「事故を報告する」だけでなく、「記録を作って残す」ところまでが事業者の責任になったということです。日々の業務記録や事故の記録を、いざというときに慌てず出せる形で残しておくことが大切です。

結局どうすればいいか

やることの順番を体で覚えておくのが一番です。第一に、事故を起こしたら道路交通法72条の義務どおり、直ちに止まって、けが人を救護し、後続車への危険を防ぎ、警察へ報告する——この初動が最優先です。第二に、警察への報告は日時・場所・死傷者・壊れた物・積載物・講じた措置の5項目で、現場に警察官がいなければ最寄りの警察署へ届けます。第三に、救護せず立ち去るとひき逃げ=救護義務違反となり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金・35点で免許取消3年という重い結果になるため、自己判断で現場を離れないこと。第四に、道路状況・衝突地点・停車位置・破片などを写真で記録し、目撃者の連絡先を確保したうえで、その日のうちに自分の保険会社へ連絡します(対人事故は原則60日以内の書面通知が保険金の条件、2026-07-08時点)。自分自身のけがも早めに受診しておきます。第五に、黒ナンバー事業者は自動車事故報告規則にもとづき対象事故を原則30日以内(重大事故は24時間以内の速報も)に運輸支局経由で報告し、2025年4月からは事故記録の3年保存・業務記録の1年保存・貨物軽自動車安全管理者の選任も求められます。金額や期限などの細部は変わりうるため、最終的には警察・国土交通省・加入する保険会社の最新の案内で確認してください(2026-07-08時点の情報です)。

出典・参考

官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。

この記事は参考になりましたか?

いただいた声は、今後の記事づくりの参考にします。

軽貨物の業務管理は K-LEDGE でまとめられます。

関連記事

点呼・安全管理

軽貨物の「事故の記録」3年保存を守る運用|2025年4月義務化、業務記録(1年)・30日報告との違い

2025年(令和7年)4月1日から、黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)にも「事故の記録」の作成と営業所での3年間の保存が義務化された。何を・どの様式で書き、業務記録(1年)や30日以内の事故報告とどう違うのか、紛失しない運用まで一次資料で整理する。

点呼・安全管理

軽貨物の「貨物軽自動車安全管理者」選任義務への対応|誰が・いつまでに・何をするか

2024年の省令改正で、黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)にも安全管理者の選任が義務づけられました。個人事業主・車両1台でも対象です。候補者選び・講習・選任届出・2年ごとの定期講習という流れを、猶予期限から逆算して整理します。

点呼・安全管理

スピードと安全を両立させる配達の考え方|「急ぐほど稼げる」は本当か

「速く回すほど稼げる」と思われがちだが、国のデータでは軽貨物だけ事故が増え、事故の最多は焦りが生む追突だ。2025年4月の安全記録義務化や休憩の目安をふまえ、急がず件数を最大化する考え方を整理する。

点呼・安全管理

軽貨物の点呼義務の基礎|何をどう確認し、どれだけ記録・保存するか

黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)は、業務前・業務後の点呼で酒気帯びや健康・車両を確認し、点呼記録簿に記録して1年間保存する義務があります。ひとりで運ぶ個人事業主でも必要な、点呼と記録・保存の基礎を整理します。

経営・事業拡大

軽貨物の増車のやり方と「増やすべきか」の判断|届出・車庫・台数で増える義務まで

軽貨物(黒ナンバー)の増車は、経営変更等届出書と事業用自動車等連絡書を運輸支局に出して黒ナンバーを追加する事後の届出です。届出は無料でも台数に応じて車庫・整備管理者・安全管理者などの義務が増えるため、案件と資金の裏付けを持って段階的に増やす判断軸まで整理します。

売上・収入軽貨物ドライバー

軽貨物・開業初期の収入はこう伸びる|1日40〜60個から固定案件で安定するまでの3段階

軽貨物の開業直後は1日40〜60個から始まり収入も不安定ですが、道と配達に慣れて個数が伸び、企業配など固定案件を得ると収入は安定していきます。伸びて安定するまでの3段階の見通しと、伸びた売上を経費・記録でどう守るかを相場の目安として整理します。

点呼・安全管理の記事

このカテゴリをもっと見る