点検記録の残し方|黒ナンバーは日常点検・定期点検・業務記録で「残す義務」が違う
軽貨物(黒ナンバー)の点検にまつわる記録は「日常点検・定期点検・2025年4月からの業務/点呼/事故」の3層に分かれ、保存義務の有無も年数も違います。どれを・どれだけ残せばいいかを、法的根拠つきで整理します。
目次
軽貨物(黒ナンバー)の車で「点検の記録をどう残せばいいか」は、実は一つの答えではありません。点検にまつわる記録は大きく3つの層に分かれていて、それぞれ「法律で残す義務があるか」「何年保存するか」が違うからです。結論を先に言うと——(1)毎日の日常点検そのものは1日1回の実施が義務ですが、その記録簿を作って保存することまでは法律で義務づけられていません(残すのは推奨)。(2)一方、1年ごとの定期点検の結果は「点検整備記録簿」に記載して保存するのが法律上の義務です。(3)さらに2025年4月からは、日々の業務の記録・点呼の記録・事故の記録を作って一定期間保存する義務が新たに加わりました。この3層を分けて考えれば、「結局どれを・どれだけ残せばいいか」がはっきりします(2026-07-08時点)。
「点検の記録」は3つの層に分けて考える
点検・記録というと一括りにされがちですが、根拠になる制度は別々です。第一の層は日常点検で、道路運送車両法第47条の2にもとづき、事業用自動車である黒ナンバーの車は1日1回・運行前に行う義務があります(運行前に目視などで行う簡易な点検という位置づけです)。第二の層は定期点検で、こちらは一定間隔ごとに行う専門的な点検であり、整備工場に依頼することもできます。第三の層は、2025年4月施行の制度改正で新設された、事業者として残す記録(業務・点呼・事故)です。同じ「記録」でも、保存義務の有無も保存年数も違うため、まとめて扱わず分けて管理するのが実務のコツです。
日常点検の記録 — 法律上の「保存義務」はないが残す意味がある
まず押さえたいのは、日常点検は「実施」が義務でも、その「記録簿の作成・保存」までは法律で義務づけられていない、という点です。自動車点検基準には、日常点検の結果を記録簿に記載して保存せよという規定が明記されていません。記録簿への記載・保存が法律上の義務になっているのは、次に説明する定期点検の結果のほうです(定期点検は道路運送車両法第48条、点検整備記録簿は同第49条が根拠です)。この「日常点検は残す義務なし・定期点検は残す義務あり」の線引きを取り違えないことが、記録を考えるうえで一番の要点です。
ただし「記録しなくてよい」と「記録する意味がない」は別です。毎日どこを見て異常がなかったかを残しておけば、部品の劣化やオイル・液量の減り方といった変化に気づきやすくなり、整備の判断材料になります。また、万一トラブルや事故が起きたときに「運行前にきちんと点検していた」ことを示す証跡にもなります。残し方は難しく考える必要はなく、点検した日付・車両番号・確認した項目・異常の有無・気づいたことを1行ずつ書ける簡単な様式で十分です。毎日の積み込み前のルーティンに、点検と一緒に「1行残す」動作を組み込むと続きやすくなります。
定期点検の記録 — 点検整備記録簿は法定の保存書類
日常点検と違い、定期点検の結果は「点検整備記録簿」に記載して保存することが法律上の義務です。ここで軽貨物ならではの注意点があります。黒ナンバー(車検証の備考欄に「貨物軽自動車運送事業の用に供する自動車」と記載された軽自動車)は、日常点検基準は自動車点検基準の別表第2、定期点検基準は別表第6にもとづいて行います。そして定期点検の間隔は12ヶ月(1年)ごとです。一般の事業用トラック(緑ナンバー)は3ヶ月ごとですが、軽貨物は同じ事業用でも12ヶ月ごとなので、「事業用だから3ヶ月点検」と思い込むと間違えます。車検は初回登録から2年、その後は2年ごとです。
点検整備記録簿の保存期間は、点検の種類によって異なります。国土交通省の解説では、3ヶ月・6ヶ月点検の対象車は1年間、1年(12ヶ月)点検の対象車は2年間の保存とされています。黒ナンバーは1年(12ヶ月)点検の対象なので、その点検整備記録簿は2年間保存する、という整理になります(2026-07-08時点。保存年数は制度変更で変わりうるため、最新は国土交通省の案内で確認してください)。整備を工場に依頼した場合、記録簿の記載も工場側でしてもらえることが多いので、受け取った点検整備記録簿は捨てずに保管しておきます。
2025年4月から加わった 業務・点呼・事故の記録
点検の記録とは別に、2025年4月施行の制度改正で、事業者として残す記録が新たに義務化されました。改正では営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で講習を受けさせ、運輸支局等を通じて届け出ることが求められます。あわせて、毎日の業務の開始・終了地点や従事した距離などを書く業務の記録は1年間保存、点呼の内容を書く点呼記録簿も1年間保存、事故が起きたときの概要・原因・再発防止対策などを書く事故の記録は3年間保存が必要です。死傷者を生じた事故など一定規模以上の事故は、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ報告します。これらの新しい義務については、既存の事業者に2年間の経過措置が設けられています(2026-07-08時点)。
整理すると、点検まわりで残すべき記録は、法律上の保存義務がある「点検整備記録簿(定期点検の結果)」と、義務ではないが残しておきたい「日常点検の記録」に分かれ、そこへ2025年4月からの「業務・点呼・事故の記録」が加わる、という三重構造です。保存年数も、日常点検の記録は法定なし、点検整備記録簿は2年、業務・点呼の記録は1年、事故の記録は3年とバラバラです。層ごとに保存場所とファイルを分けておくと、期限が来るまで確実に取り出せる形で管理できます。
結局どうすればいいか
残し方は、記録を3つの層に分けて考えると迷いません。第一に、毎日の日常点検は「実施」が義務で、その記録簿の作成・保存までは法律の義務ではありません。ただし整備の判断材料と証跡になるので、日付・車両番号・点検項目・異常の有無を1行残す簡単な様式で続けるのがおすすめです。第二に、定期点検の結果は「点検整備記録簿」への記載・保存が法定の義務です。黒ナンバーの定期点検は12ヶ月ごと(緑ナンバーの3ヶ月ごととは別)、車検は2年ごとで、点検整備記録簿は2年間保存します(2026-07-08時点)。工場に頼んだ場合は受け取った記録簿を捨てずに保管します。第三に、2025年4月からは業務の記録(1年)・点呼記録(1年)・事故の記録(3年)の保存が新たな義務です。保存年数が層ごとに違うので、まとめず分けて管理します。年数や様式などの細部は制度改正で変わりうるため、最終的には国土交通省や運輸局の最新の案内で確認してください(2026-07-08時点)。
出典・参考
官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。
- 国土交通省 点検整備の種類(日常点検・定期点検の違い・頻度・記録簿の保存期間)(国土交通省)2026年7月8日 確認
- 国土交通省 貨物軽自動車運送事業者の皆様へ(制度改正・点呼記録簿の例)(国土交通省)2026年7月8日 確認
- 自動車点検基準(e-Gov法令検索・条文原文)(デジタル庁 e-Gov法令検索)2026年7月8日 確認
- 自動車整備振興会 貨物軽自動車運送事業の用に供する軽自動車の取扱いについて(別表第2・別表第6)(自動車整備振興会)2026年7月8日 確認
- コスモ石油販売 軽貨物車の車検の通し方(定期点検12ヶ月・車検2年)(コスモ石油販売)2026年7月8日 確認
- JAF交通安全トレーニング 貨物軽自動車安全管理者の選任(2025年4月施行)(JAF(日本自動車連盟))2026年7月8日 確認
- 貨物軽自動車運送事業者ハンドブック(国土交通省 関東運輸局・東京運輸支局)(国土交通省 関東運輸局)2026年7月8日 確認
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