軽貨物ドライバーの「1日の売上目標」の立て方|欲しい手取りから逆算する4ステップ
「1日いくら稼ぐか」は感覚ではなく、欲しい手取りから逆算します。税・社会保険料・経費・手数料を順に足し戻して必要な月間売上を出し、稼働日数と単価で1日の目標と件数に落とす手順を、官公庁の実額つきで整理します。
目次
「1日にいくら稼げばいいか」を、なんとなくの相場や他人の数字で決めていませんか。売上目標は、感覚ではなく「欲しい手取り(自分の生活に自由に使えるお金)」から逆算して決めるのが確実です。手順はシンプルで、目標手取りに税金・社会保険料を足し戻して「必要な利益」を出し、そこへ経費を足して「必要な売上」にし、元請の手数料を割り戻して「必要な受託売上(額面)」を求め、最後に稼働日数と1件あたりの単価で割って「1日の売上目標」と「1日の必要件数」に落とします。この記事では、逆算に使う制度の数字(国民年金保険料など)は官公庁の一次情報で確認し、手取り相場・手数料率・単価といった契約で変わる部分は「自分の実数を入れる変数」として示します(金額は2026-07-08時点で確認したものです)。
「1日いくら稼ぐ」ではなく、欲しい手取りから逆算する
多くの人は「1日2万円」「月50万円」のように、売上そのものを先に目標にしがちです。しかし売上は手元に残るお金ではありません。売上から経費・手数料・税金・社会保険料が引かれた残りが手取りです。だから順番を逆にして、まず「毎月いくら手元に残したいか」を決め、そこから引かれるものを一つずつ足し戻していくほうが、必要な売上を正確に出せます。逆算の流れは4段です。(1)目標手取り+税金・社会保険料=必要な利益(事業所得)、(2)必要な利益+経費=必要な売上、(3)必要な売上÷(1−手数料率)=必要な受託売上(額面)、(4)必要な受託売上÷稼働日数=1日の売上目標、さらに÷1件あたり単価=1日の必要件数。以下、各段を順に見ていきます。
税金・社会保険料・経費を足し戻して「必要な売上」を出す
まず、目標手取りへ税金と社会保険料を足し戻して「必要な利益(事業所得)」を求めます。個人事業主が全額自分で負担する社会保険料のうち、国民年金保険料は全国一律の定額で、令和8年度(2026年4月〜2027年3月分)は月額17,920円です(令和7年度は月額17,510円で、毎年度改定されます/2026-07-08時点)。もう一方の国民健康保険料は、前年の所得や世帯構成、住んでいる市区町村によって計算が異なり、全国一律の金額はありません。自分の自治体の料率で確認してください。税金は、事業の利益に対して所得税と住民税がかかり、利益が増えるほど負担も増えます(具体的な税率はここでは断定しません)。「目標手取り+これらの税・社会保険料=必要な利益」という関係を押さえ、社会保険料のように金額が分かるものは実額で、税金のように所得で変わるものは余裕を見て積んでおきます。
次に、その必要な利益へ経費を足し戻して「必要な売上」にします。事業所得(利益)は「売上−経費」なので、逆に必要な売上は「必要な利益+経費」です。軽貨物の代表的な経費は、ガソリン代・オイルやタイヤの交換代・自動車保険・車検代・駐車場代・備品や事務用品代などです。中でも車を仕事とプライベートで兼用している場合、ガソリン代は事業で使った分だけを「家事按分」して経費にできます。按分は走行距離または使用日数で行うのが一般的で、走行記録など合理的な根拠で事業使用の割合を説明できることが必要です。あわせて、利益を正しく圧縮して手取りを守る王道が青色申告特別控除で、複式簿記での記帳・貸借対照表などの添付・期限内申告に加え、e-Taxでの電子申告か優良な電子帳簿の要件を満たせば最大65万円を差し引けます(要件は満たすが電子申告等をしない場合は55万円)。経費や控除を正しく積むほど、同じ手取りでも必要な売上は小さくなります。
手数料は「足す」のではなく「割り戻す」。単価は自分の契約から取る
ここが逆算でつまずきやすい点です。元請や運送会社に払う手数料・ロイヤリティは、多くの場合「受託売上(額面)の何%」という割合で差し引かれます。割合で引かれるものは、足し算ではなく割り算で戻します。たとえば必要な売上が月35万円で、手数料が仮に2割なら、必要な受託売上(額面)は35万円÷(1−0.2)=約43.8万円です。「35万円+2割=42万円」としてしまうと、実際に引かれる額に足りません(この2割はあくまで例で、業界では概ね20%程度とされますが、率は契約で変わります/2026-07-08時点)。そしてもう一つ重要なのが単価です。国が定める「標準的な運賃」は、平成30年の貨物自動車運送事業法改正で導入された告示制度で、対象は一般貨物(トラック運送事業)です。貨物軽自動車運送事業に特化した運賃表は示されておらず、軽貨物の運賃は各事業者が独自に設定します。つまり、あなたの売上単価は世間の相場表ではなく、自分が結んでいる委託契約の金額からしか取れません。手数料率も単価も、必ず自分の契約・明細の実数を使ってください。
稼働日数と単価で「1日の目標」と「件数」に落とす
必要な受託売上(額面)が出たら、月の稼働日数で割ると「1日の売上目標」になります。生計を主とする人は週5〜6日稼働が多いとされますが、これも自分の予定で置き換えてください。1日の売上目標が決まったら、それを1件あたりの平均単価で割った数が「1日にこなすべき件数」です。軽貨物は配送個数に応じた成果報酬で働くことが多いため、この件数が日々の現実的な行動目標になります。業界メディアが示す一例では、手取り約30万円を目標にすると月約22日稼働で月間売上(額面)約44万円、1日あたりの売上目安は約2万円で1日100〜150個前後、そこから手数料(概ね2割)と燃料代・高速代などの経費を引いて手取り約30万円、という試算が紹介されています。ただしこれは手数料率・単価・件数を仮に置いた目安で、契約により大きく変わります(2026-07-08時点)。数字は必ず、上の手順に自分の実数を入れて出し直してください。
売上目標を上げていくときは、消費税の区切りも意識しておきましょう。個人事業者は、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、その年の消費税の納税義務が原則として免除されます(ただし前年1月1日〜6月30日の特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは課税事業者になります)。インボイス発行事業者の登録を機に免税から課税事業者になった小規模事業者は、納める消費税を売上にかかる消費税の2割にできる「2割特例」を使えます。適用できるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する各課税期間で、事前の届出は不要、申告書に付記するだけです(基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間は対象外/2026-07-08時点で適用期限が近いため、最新情報を必ず確認してください)。売上が伸びて課税や特例の区切りに近づくときほど、手取りへの影響を早めに見込んでおくと安心です。
結局どうすればいいか
やることは5つです。第一に、売上を先に決めず「毎月いくら手元に残したいか(目標手取り)」から始めます。第二に、目標手取りに税金と社会保険料を足し戻して必要な利益を出します。社会保険料のうち国民年金は令和8年度で月17,920円(令和7年度は月17,510円)、国民健康保険は自治体で異なるので自分の額を確認します。第三に、必要な利益へ経費(ガソリンは家事按分)を足して必要な売上にし、青色申告特別控除(最大65万円・要件を満たすが電子申告等をしなければ55万円)で利益を正しく圧縮します。第四に、手数料・ロイヤリティは足すのではなく「÷(1−手数料率)」で割り戻し、単価は相場表ではなく自分の委託契約から取ります(軽貨物には国の標準的運賃の運賃表がありません)。第五に、出た「必要な受託売上」を稼働日数で割って1日の売上目標に、さらに1件あたり単価で割って1日の必要件数にします。手取り相場や手数料率・単価は契約で大きく変わる変数なので、他人の数字を当てにせず、毎月の売上と経費を記録して自分の実数で計算し直す——これがぶれない売上目標の立て方です(数字は2026-07-08時点の情報です)。
出典・参考
官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。
- 日本年金機構「国民年金保険料」(日本年金機構)2026年7月8日 確認
- 日本年金機構「令和7年度における国民年金保険料の前納額について」(日本年金機構)2026年7月8日 確認
- 国税庁 No.6501 納税義務の免除(国税庁)2026年7月8日 確認
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」(国税庁)2026年7月8日 確認
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「65万円の青色申告特別控除の適用要件」(国税庁)2026年7月8日 確認
- 国土交通省「標準的な運賃について」(国土交通省)2026年7月8日 確認
- 弥生「個人事業主のガソリン代は経費になる?」(弥生株式会社)2026年7月8日 確認
- トラッカーズ「軽貨物ドライバーの平均手取りは?」(トラッカーズ)2026年7月8日 確認
- ドラEVER「軽貨物ドライバーの手取りどのくらい?徹底検証」(ドラEVER)2026年7月8日 確認
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