軽貨物ナレッジ by K-LEDGE
配達実務

雨・雪の日の配達で無理をしないために|事故4倍・冠水路・チェーン規制を「安全の物差し」で整理

雨や雪の日の配達を「荷物を濡らさず・安全に回りきる」ための実務。JAF・気象庁・国土交通省の検証可能な情報をもとに、タイヤと車間、冠水路の危険、気象警報とチェーン規制という「どこで引き返すか」の判断軸を2026-07-08時点で整理します。

軽貨物ナレッジ編集部公開 2026年7月8日時点の情報
目次
  1. 雨の日は事故が約4倍 — 「止まれる」をタイヤと車間で確保する
  2. 水たまり・冠水路は「見た目で判断しない」
  3. どこで引き返すか — 気象警報とチェーン規制で線を引く
  4. 荷物を濡らさない・安全に回る 現場の工夫
  5. 結局どうすればいいか

雨や雪の日の配達には、大きく二つの課題があります。一つは荷物を濡らさずに届けること、もう一つは自分が事故に遭わず安全に回りきることです。結論を先に言うと、悪天候の日にやるべきことは三つに整理できます。(1)止まれる状態を確保する——タイヤを整えて速度を落とし、車間を広く取る。(2)水たまりや冠水した道は見た目で判断せず、危ないと感じたら迂回する。(3)荷物はビニールで包む・台車は拭くといった現場の工夫で濡れを防ぐ。そして最も大事なのは「危険なときは無理をしない」という線引きです。以下では、JAF(日本自動車連盟)や気象庁・国土交通省が公表している検証可能な情報を軸に、どこまで準備し、どこで引き返すかを整理します。走行テストの数値や規制の対象区間は条件や年度で変わるため、本記事の数値は2026-07-08時点のものとして読んでください。

雨の日は事故が約4倍 — 「止まれる」をタイヤと車間で確保する

JAFの解説によると、雨天時は晴天時の約4倍も交通事故が起こりやすくなるとされています。路面が濡れると、タイヤと道路の間に水が入り、路面をつかむ力(グリップ)が落ちるためです。まず足元から見直しましょう。タイヤの溝の深さが1.6mm未満になったタイヤは、整備不良として法律で使用が禁止されています(法定使用限度)。溝が浅くなったタイヤは、雨の日にとくに滑りやすく危険です。

JAFのウェット路面での制動テストでは、溝が減った2分山タイヤ(溝約3.1mm)は、新品のタイヤに比べて止まるまでの距離(制動距離)が約1.5倍も長くなりました(路面などの条件で変わる実験値です)。同じ速度・同じタイミングでブレーキを踏んでも、溝が減っているとその分だけ止まりきれずに進んでしまう、ということです。対策はシンプルで、雨や雪の日は速度を落とし、前の車との距離をいつもより広く取ること。急ブレーキ・急ハンドルを避け、早めにアクセルを緩めて余裕をもって止まる運転に切り替えます。

水たまり・冠水路は「見た目で判断しない」

スピードを出しすぎたときに起こりやすいのがハイドロプレーニング現象です。これは水がたまった路面を高速で走ったとき、タイヤと路面の間に水の膜ができてタイヤが浮き、ハンドルもブレーキも利かなくなる現象です。スピードを出しすぎるとタイヤの排水が追いつかなくなって起こりやすくなります(路面やタイヤの状態で変わります)。雨の日は速度を控えることが、そのまま予防になります。

水がたまって深くなった冠水路は、さらに慎重な判断が必要です。JAFの冠水路走行テストでは、水深30cmでは時速10kmで走れたものの、時速30kmで進むとエンジンルームへ水が入り、水深60cmでは時速10kmでも約31m進んだ地点でエンジンが止まって走行不能になりました。膝くらいの水深になると、大人でも歩くのが難しくなります。冠水路は水深も水中の様子も見た目では分からないため、安易に進入せず迂回するのが原則です。とくに川沿い・海岸沿い・高架下・アンダーパスなど低い場所は水がたまりやすく危険なので、進入を避けてください。

どこで引き返すか — 気象警報とチェーン規制で線を引く

無理をしない判断の物差しになるのが、気象庁が出す防災気象情報です。重大度の低い順に、注意報(災害のおそれ)、警報(重大な災害のおそれ)、危険警報(重大な災害のおそれが大きい危険な状況)、特別警報(特に異常で重大な災害のおそれが著しく大きい)という階層で発表されます(危険警報は気象庁の新しい区分で、2026-07-08時点の分類です)。一般に出される警報には、氾濫・大雨・土砂災害・高潮・大雪・暴風・暴風雪・波浪の8種類があり、いずれもその上に特別警報があります。警報以上が出ている地域では、配達の可否や時間帯を見直す判断材料になります。

雪の日にとくに関係するのがチェーン規制です。これは大雪特別警報や大雪の緊急発表が出るような、異例の降雪時に実施されるもので、規制中はタイヤチェーンを付けていない車は通行できません。スタッドレスタイヤを履いていても、4WD車であっても、チェーンを付けていなければ規制の対象です。対象は過去に立ち往生などが起きた峠や急勾配で、チェーンの着脱や待機ができる区間に限られます。よく似た「冬用タイヤ規制」とは別物で、冬用タイヤ規制はスタッドレスなどの冬用タイヤかチェーンがあれば走れますが、チェーン規制は冬用タイヤでもチェーンがないと走れません。対象区間は年度や路線で変わるため、具体的な場所は国土交通省やNEXCOの最新情報で確認してください(2026-07-08時点)。なお国土交通省は、台風などの異常気象時にトラック運送事業者向けの『輸送の目安』を定めており、冬用タイヤ未装着などで事業用の車が立ち往生した悪質な事例は、監査のうえ行政処分の対象になりうるとされています。悪天候での運行は、自分の安全だけでなく事業者としての責任にも関わる、という点は押さえておきましょう。

荷物を濡らさない・安全に回る 現場の工夫

ここまでは安全に関わる確かな情報でしたが、荷物を濡らさない工夫については、軽貨物の現場で共有されているノウハウ(軽貨物業界メディア発で、法令の根拠があるものではありません)を、一般的な例として紹介します。よく挙げられるのは、台車の底に段ボールやタオルを敷いておく、濡れた台車は拭いてから荷物を積む、荷物をビニール袋や大きめのゴミ袋で包んでから運ぶ、といった濡れ対策です。受け渡しのときは、軽バンのリアドアを開けて屋根代わりにして荷物を出し入れしたり、玄関先では軒下やひさしを使って手渡すと、荷物も自分も濡れにくくなります。準備としては、カッパ(レインウェア)や長靴を車に常備しておくと、急な雨でも動きやすく、手もふさがりません。どれも各自の状況に合わせて取り入れる工夫であって、決まりではない点は理解しておいてください。

結局どうすればいいか

やるべきことを順番にまとめます。第一に、雨の日は晴れの日の約4倍事故が起きやすいという前提に立ち、タイヤの溝(1.6mm未満は使用禁止)を保ち、速度を落として車間を広く取る——溝が減ると制動距離が約1.5倍になるためです。第二に、スピードの出しすぎはハイドロプレーニングを招くので、雨天は控えめに走る。第三に、冠水路は見た目で水深が分からず、水深60cmでは時速10kmでもエンジンが止まりうるため、川沿い・アンダーパスなど低い場所には進入せず迂回する。第四に、気象庁の警報(注意報<警報<危険警報<特別警報)を確認し、警報以上なら配達の可否・時間帯を見直す。雪の日はチェーン規制(冬用タイヤでもチェーン必須)と冬用タイヤ規制の違いを理解し、対象区間は国土交通省・NEXCOの最新情報で確認する。事業用の車の立ち往生は行政処分につながりうる点も忘れずに。第五に、荷物はビニールで包む・台車は拭くなどの現場の工夫で濡れを防ぐ。そして何より、危険を感じたら無理をしないこと——安全に回りきることが最優先です。走行テストの数値や規制区間は条件・年度で変わるため、本記事の数値は2026-07-08時点のものです。

出典・参考

官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。

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